さとまも談義|テクノロジーと体験とアートと

テクノロジーとビジネスと人の関係性にずっと興味があります。アートやダイバーシティのキーワードも含めて、世界がどう変わっていくか、変えていけるかをお酒を飲みつつ考えるブログ

3Dプリンターへの参入による競争優位の確保とは?

今朝、日経新聞を読んでいると「リコーやキャノン、3Dプリンターに参入」という記事が。もちろん、今後の市場拡大は明らかであり、プリンターメーカーとして参入すべき領域であるのは間違いない。一方で、関連する法制度の整備や標準規格化など、競争優位を確立するためには、製品開発以外にも取り組むべき点も多い。

一般に、3Dプリンターは金型を作るとコストが高くつくような多品種少量生産に向いているといわれていますが、個人的にはもっと想像力を働かせて、市場を広く捉えるべきと考えています。そもそも金型では作りにくい形状の部材を作ることも可能であるし、個人レベルでの活用が進めば、例えば自作フィギュア市場の拡大など、「ちょっとしたものは自分で作るか」という潮流が産まれるかもしれない。

そうなってくると、設計図の知財問題や著作権に対して、迅速かつ自動で対応が可能なソリューションが求められたり、法制度とも関連して、新たに解決すべき問題が浮上してくるはず。IT戦略の専門家の視点では、こういった3Dプリンターの本機能の周辺に潜む課題をいち早く捉え、テクノロジーにより解決・高速化することに、リコーやキャノンといった大企業は勝機があるのではないかな、と。

先ほどの知財の件についても、キャノンやリコーは知財部門を保有しているわけだし、ベンチャー企業に比べれば現時点では優位性があるでしょう。一方で、手をこまねいていればベンチャーと特許事務所等のコラボレーションにより、これらの優位性も失われる。規模と優位な機能を活かした迅速な市場参入が一つの鍵になるかなーと。

もう一つ、検討したいのは3Dプリンターの稼動・使用状況のデータ集積ができないか、という観点。現在でもプリンターの稼働状況をキャプチャして、故障に先んじて対応を実施するなどの活用が進んでいるが、もう一歩踏み込んで、3Dプリンターで処理される素材・設計内容まで収集できれば、一気にインサイトを深めることができるかもしれない(もちろん、規制や個人情報も含めて懸念点はたくさんあるが)。

いずれにせよ、こういったことにまで踏み込んで新規事業としての可能性を見定め、挑戦していくべきと思います。
今後の展開に期待!

羽田空港の顔認証出国実験へ参加

みなさん、まだ蒸し暑い日が続きますが8月も終わり、徐々に秋の気配を感じる今日この頃、いかがお過ごしでしょうか?
本日から本格的に夏休みをいただいて、家族でシンガポールへ旅行へ出かける所です。

羽田空港からの国際線で面白い実験に参加しました。どうやら東京オリンピック開催に向けて、日本国民の入出国確認作業を最小化すべく、各社が実験を進めているようです。
僕が不勉強で知らなかったのですが、パスポートのICチップの中には、証明写真のデータが保存されているようですね。顔認証システムでは、このICチップ内の画像データ(形式までは分かりませんが、jpgかtiffかな)と、ゲートで撮影する顔画像を照合して認証をする仕組みのようです。
なかなか良い経験になりました。これで少しでも業務プロセスの短縮になるといいなーと思います。

では、またシンガポールより☆

今週の気になる記事

ちょっと弊社関連ネタが多くて恐縮ではあるのですが、面白いなーと思ったので、共有まで。

◆「脳波や視線で家電を操作」、PhilipsAccentureがコンセプト実証用ソフトウエアを開発

http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20140822/372061/?SS=imgview_ndh&FD=-1471211293

昨今、Ice basketで話題を集めているALSにも役立つのではないかと考えられるテクノロジー。
こういった先端研究は、専門領域の有識者ではないと進められないところがあるのですが、僕もこういう領域をどこか確立しなくては…と最近よく考えます。

まずは、こういった事例については、経過も含めてウォッチし、他の業界や他用途で同じような適用ができないか…を考えていきたいと思います。

◆ 一足飛びの技術導入が加速、「リープフロッグ」とは何か

http://itpro.nikkeibp.co.jp/atcl/idg/14/080400022/?ST=cio-consumerit&P=2

概念としては分かるのだが、理由の考察に関してはやや懐疑的です。
ファブレットが流行る理由が動画が見やすいから…というのは、一般的に考えればそうかもしれません。

一方で、新興国のインフラに鑑みるに、動画をリアルタイムでどんどん見るというのは、実際問題まだまだ先の話であり、現地の方々が本当にそういう理由で購入意欲を持っているのか…は個人的には疑問。
もちろん、スマホもPCも持っていなければ、ファブレットくらいの大きさのデバイスがちょうど良い…ということは往々にしてあると思い、その点については異論はないです。

結局の所、新興国が先進国と同じ流れを汲んで成長していくわけではない…という基本的な視点を踏まえると、こういったことは別に不思議でもなんでもなく。先進国が直面している"cutting -edge"を新興国も知り得る時代になっているわけです。インターネットの恩恵の一つですね。彼らとしても、情報さえあれば、一足飛びに最新のトレンドに乗ることも可能であり、しがらみがない分、躊躇がないという状況は生まれ得るでしょう。

◆ ◆ ◆

さて、今週は短いながらも夏休みを取る予定です。
初めてのシンガポール旅行。現地の知人や同じタイミングでシンガポールへ来ている日本の友人などともmeet upしつつ、基本的な観光所は押さえていきたいと思います。

初のビジネス出張 to China

意外かもしれませんが、社会人になって初めての海外出張が決まりました。…といっても、中国-大連なので近くではありますが。

前職も外資系企業だったのですが、こちらでも海外への出張の機会というのはかなり少なかったという印象。
特に、日本企業相手に直接ビジネスを実施するコンサルティング部門やSI部門は、クライアントが国外へ進出する際にサポートで付いていく以外は、ほとんど海外へ出かける理由がなかったりします。

外資系企業に入ると、バンバン海外へ出張するという印象をお持ちの方は、会社による…ということをご理解いただければ。どちらかというと、海外に子会社をたくさんもっているような日本企業のほうが、海外出張は多いと思います。

火曜の朝から、ニューヨークから訪問されるクライアント対応のため、前日入りしてプレゼンのリハーサルや、中国メンバと挨拶したりなど。今回、僕は日本側のコーディネイターという立場であるため、特に資料作りなどはないのですが、けっこう調整に時間を取られており、本業が圧迫されていたり。

なので、出張中も本業のコンサルティングワークに集中する必要があるな…と、多忙を覚悟して今週に臨む予定。明日は成田空港9時半発なので、5時起きで移動かな…頑張って早起きします。

中国のお土産等、まったく思いつかないのですが、もしお勧めをご存知の方はぜひお知らせください。

ブレーンストーミングは時間の無駄か?

SBI北尾さんのブログに触発され、僕もブレーンストミングについての個人的な見解を述べたいと思い、筆を執りました。
さて、皆さんは「ブレスト」について、どのようなイメージをお持ちでしょうか?

  • 色々な意見が出て、新しい事業・課題解決案が生まれた!
  • やってみたけど、アイディアが出なかった
  • ブレストしようと言われて集まったのだが、上司の独壇場で発言できなかった etc


世の中には、間違ったブレーンストミングが溢れています。また、いつも"正しい"ブレーンストミングが必要かといえば、そうでもなかったりします。僕がコンサルティングワークを進める際「ブレストしよう」と言うときには、2つの明確なパターンがあります。

  1. 多種多様な視点から、純粋にアプローチやアイディアを収集したい
  2. 参加者と一緒に考えたという一体感を醸成するために、ブレストという形態を取る


まず、一つ目から説明しましょう。これは社内のチーム内で実施することが多いのですが、いわゆる正統派ブレーンストミングです。お題目は主催者がきちっと考える必要がありますが、自由闊達に意見を述べ、発想を膨らませるのが目的です。自由、かつ大量に…という点が重要なので、声の大きな人に左右されないよう、最初はポストイットで各自の意見を書き出したりする等の工夫をします。難しいのは、テーマが広い場合にどのように収束させるか、という点。これはファシリテーターの力量により、かなり左右されます。逆説的に言えば、特定のテーマに絞り込めば込むほど、ファシリテートは楽になります。

2つ目。
これは、仕事柄というのもあるのですが、全員で意見を出し合ったことにより、合意形成を容易にするため、ブレーンストミングという形式を活用するパターンです。この場合、事前にチーム内でどうようのブレストを何度かトライアルしてみて、「何を落としどころとするか」を整理しておきます。ブレーンストミング自体では、オープンに意見は受け入れるものの、最終的には事前に想定したフレームワークや方向性に当てはめて、ファシリテーションを実施します。つまり、僕らにとっては多少の誤差はあれど、想定の結果を得ることになるわけです。「なんだ、しょうもないことをやっているな」と思う方もいらっしゃるでしょう。しかしながら、この手法は大きな威力を発揮することが多々あります。ぜひ、みなさんも試してみてください。

ちなみに、いずれの場合もブレーンストミングの基本ルールを守って進行することが最低限必要。こういうことも知らないで、えらそうにブレーンストミングだから自由に意見を言いたまえ、という上司にはならないように気をつけてください。参加者に対しても、とても失礼だと思います。
(参考)ブレーンストミングのルール

  • 判断・結論を出さない(結論厳禁)
  • 粗野な考えを歓迎する(自由奔放)
  • 量を重視する(質より量)
  • アイディアを結合し発展させる(結合改善)


あと、成功理にブレーンストミングを実施するには、「センスの良いテーマ」を定義することと、収束時に適切なフレームワークに落とし込めるかが大変重要です。ここは脳みそ勝負なので、主催者の方々はぜひ意識して頂きたいところ。いかに当日のファシリテーションが上手くても、もともとのテーマが曖昧だったり、ずれていたりするとブレーンストミングの効果は10分の1くらいになります。最後のフレームワーク化でもたつかないためにも、シャープなテーマを設定し、事前にある程度の構造を想定して把握しておくべきダと思います。

色々と書き綴ったものの、場数をこなすことも重要なので、みなさんもぜひ気軽にトライしてみて欲しいと思います。僕自身は決して時間の無駄とは思いませんので。

◆北尾さんブログ
http://www.sbi-com.jp/kitao_diary/archives/201406129121.html

Peer to Peerモデルサービスの拡大

ソフトウェアとインターネット、モバイルデバイスによるコネクティビティの爆発的向上により、既存の規制下では考えられないようなサービスが始まっています。

Airbnbは、昨今Facebookでも熱心に広告を出しているので、ご存じの方が多いのではないでしょうか?
このサービス要は賃貸契約書なしに、不動産の取引をしていると言っても良いでしょう。もちろん、各国の法規と照らしながらチューニングを進めているのだと思いますが。

こういったサービスは、今後もっとたくさん生まれてくると思います。下記の記事で述べられている視点は、今後僕らがコンサルティングを進める中でも意識しなければならない点でしょう。
一方で、こういったuncontrollableな側面の強いサービスを、いわゆる大企業が受け入れられるか、という部分も大きな焦点になってくると考えています。

そうなると、本業と切り離して進めるだとか、既存事業からの影響やプレッシャーを排除し、独立した小団体で試行していくのが基本的なストーリーなのかな、と。

◆The Future of the Sharing Economy Is a World Built Like Bitcoin
http://www.entrepreneur.com/article/234804

広告ビジネス次の10年

「広告マンの8割はいらない」という、一種衝撃的なコメントが目に付く当書籍。webのコラムか何かで見つけて、興味を持って購入しました。なぜ興味を持ったかというと、僕の組織上のミッションの一つにマーケティング業務のデジタル化も含んでいるからです。

デジタルマーケティングというと、ITを活用した新たな広告、webアドバタイジングというイメージを持つ人も多いかと思いますが、こういった領域が伝統的なテレビ・雑誌・新聞等のチャネルを浸食していくことで、マーケティングの組織的遂行形態や広告代理店の役割とポジショニングが変わってくることは間違いないと考えています。

今まで、広告主である企業は、広告代理店を通じて様々なマーケティングチャネルへの媒体提示を介して、売上向上やブランディングを進めていました。企業内で完結できるマーケティング企画ももちろんありましたが、ある程度の大規模な宣伝が必要なものは、代理店を通すという形態が一般的だったでしょう。
しかし、特にwebに関して言えば、google, yahoo等が圧倒的な優位を築き、伝統的な広告代理店がカバーできていなかった領域をカバーし始めています。リスティング広告SEO対策で電通さんに相談する企業は少ないでしょう。これは、製品やサービスという領域だけでなく、マーケティング自体もデジタル化による破壊(disrupt)の脅威に晒されているということだと考えます。

このような動きを見ていくと、ITの領域と同じような活動が必要になってくると思うんですよね。キーワードは、

  • コア・ノンコアの識別
  • ソーシング戦略
  • 戦略的パートナーシップ

つまり、IT領域でクラウドにするか、オンプレミスにするか、という議論と同様に、マーケティング領域においても、どこまでは外のサービスを活用するか、自前で一貫して管理・実行するか…企業毎に考える必要があると思うのです。
次はソーシングですね。外のサービスを使う場合でも、戦略や企画を自社で持つのか、そこからアウトソースするのか、オンプレミス的に持つ場合も効率を考慮した際に、本当にすべての工程を自社で担当すべきなのか、またはそのスキルはあるのか?
そして、顧客視点で最適化したサービスを組み上げるためには、個別の入札単位で仕事をするのではなく、戦略的に提携して弱点を補ってくれるパートナーの存在が必要不可欠です(全部自前であれば不要ですが、現実的には、特に日本では難しいでしょう)。

こういった、まさに僕が今までIT戦略・変革で取り組んできた論点をマーケティング分野でも、今後本格的に考えていかなければならない時代に来ているな、と何となしに考えていました。

ところが…ということを、何と当書籍でも述べて頂いているのです(笑)
今の僕の思考や問題意識と同じ視点で書かれているので、とても読みやすく、かつ親近感を覚えた一冊です。

また、本書の中でも、ITやコンサルティングファームが、今後業界へ参入してくるということが予想されています。この視点は鋭い。これからまさに参入しようとしていますし、業務プロセスを読み解く力、IT知見・実装力、地頭の良さ…などコンサルティングで培った組織的なケイパビリティを踏まえると、ノウハウがないからといって、広告代理店側も安寧としている場合ではないでしょう。何より、コンサルティングファームは、経営レベルのリレーションがある場合も少なくないのですし。

広告やマーケティングに関わる方だけではなく、IT・コンサル業界の方々も理解しておくべき内容だと思います。

リンク:広告ビジネス次の10年


広告ビジネス次の10年

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