さとまも談義|テクノロジーと体験とアートと

テクノロジーとビジネスと人の関係性にずっと興味があります。アートやダイバーシティのキーワードも含めて、世界がどう変わっていくか、変えていけるかをお酒を飲みつつ考えるブログ

広告ビジネス次の10年

「広告マンの8割はいらない」という、一種衝撃的なコメントが目に付く当書籍。webのコラムか何かで見つけて、興味を持って購入しました。なぜ興味を持ったかというと、僕の組織上のミッションの一つにマーケティング業務のデジタル化も含んでいるからです。

デジタルマーケティングというと、ITを活用した新たな広告、webアドバタイジングというイメージを持つ人も多いかと思いますが、こういった領域が伝統的なテレビ・雑誌・新聞等のチャネルを浸食していくことで、マーケティングの組織的遂行形態や広告代理店の役割とポジショニングが変わってくることは間違いないと考えています。

今まで、広告主である企業は、広告代理店を通じて様々なマーケティングチャネルへの媒体提示を介して、売上向上やブランディングを進めていました。企業内で完結できるマーケティング企画ももちろんありましたが、ある程度の大規模な宣伝が必要なものは、代理店を通すという形態が一般的だったでしょう。
しかし、特にwebに関して言えば、google, yahoo等が圧倒的な優位を築き、伝統的な広告代理店がカバーできていなかった領域をカバーし始めています。リスティング広告SEO対策で電通さんに相談する企業は少ないでしょう。これは、製品やサービスという領域だけでなく、マーケティング自体もデジタル化による破壊(disrupt)の脅威に晒されているということだと考えます。

このような動きを見ていくと、ITの領域と同じような活動が必要になってくると思うんですよね。キーワードは、

  • コア・ノンコアの識別
  • ソーシング戦略
  • 戦略的パートナーシップ

つまり、IT領域でクラウドにするか、オンプレミスにするか、という議論と同様に、マーケティング領域においても、どこまでは外のサービスを活用するか、自前で一貫して管理・実行するか…企業毎に考える必要があると思うのです。
次はソーシングですね。外のサービスを使う場合でも、戦略や企画を自社で持つのか、そこからアウトソースするのか、オンプレミス的に持つ場合も効率を考慮した際に、本当にすべての工程を自社で担当すべきなのか、またはそのスキルはあるのか?
そして、顧客視点で最適化したサービスを組み上げるためには、個別の入札単位で仕事をするのではなく、戦略的に提携して弱点を補ってくれるパートナーの存在が必要不可欠です(全部自前であれば不要ですが、現実的には、特に日本では難しいでしょう)。

こういった、まさに僕が今までIT戦略・変革で取り組んできた論点をマーケティング分野でも、今後本格的に考えていかなければならない時代に来ているな、と何となしに考えていました。

ところが…ということを、何と当書籍でも述べて頂いているのです(笑)
今の僕の思考や問題意識と同じ視点で書かれているので、とても読みやすく、かつ親近感を覚えた一冊です。

また、本書の中でも、ITやコンサルティングファームが、今後業界へ参入してくるということが予想されています。この視点は鋭い。これからまさに参入しようとしていますし、業務プロセスを読み解く力、IT知見・実装力、地頭の良さ…などコンサルティングで培った組織的なケイパビリティを踏まえると、ノウハウがないからといって、広告代理店側も安寧としている場合ではないでしょう。何より、コンサルティングファームは、経営レベルのリレーションがある場合も少なくないのですし。

広告やマーケティングに関わる方だけではなく、IT・コンサル業界の方々も理解しておくべき内容だと思います。

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